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日々の雑記

「冷首」

辞典編集という仕事柄、日がな一日、辞典とにらめっこしていると、「うわー、すごいのが釣れた!」と釣り糸がぴーんと張る瞬間がある。今日の釣果はこれ。

 

ひえくび【冷首】

《名》自分が討ち取った相手ではなく、すでに死んでいた敵から斬り取った首。

(精選版『日本国語大辞典』)

 こういうことばに出会うと、日本語の造語力ってすごいなあと思ってしまう。そして、時代が移り、人の生首など日常にない現代においても、「冷首」と言われると、「うまいこと言うなあ」と感心してしまう自分がいる。なんでだろう。

この冷首には、なにかこう冷笑の気配がある。

「あいつはよお、威張っているがよお、生きてる人間の首を斬ったことがねえんだ」

「いっつも、死んだ輩の首を切り取って手柄にしている」

「ぜーんぜん違うだろ。生きた人間の首を斬るっていうのはな。そりゃ、ぜーんぜん違うんだよ」

そんな雑兵の会話をついつい思い浮かべてしまう。どう違うが分からないけど、違うということだけは、「冷首」ということばの存在が示しているのだ。